3/27_29 ふりゆくもの

 

床 花さそふ嵐の庭の雪ならでふりゆくものは我身なりけり

花 一休椿 七竈

花入 手桶型

香盒 土鈴香盒

 


床は坂部先生の作品です。
お稽古ではかな文字を勉強し、

問答でスラスラと詠み上げられるようにしました。

 

 

この歌は百人一首の96番歌です。
作者は入道前太政大臣、藤原公経のことです。 

それとも、西園寺公経の名前の方が有名でしょうか。
西園寺家の実質的な祖ということで、

西園寺公望の祖先に当たります。


鎌倉幕府4代将軍藤原頼経・関白二条良実・

後嵯峨天皇の中宮姞子の祖父となり、

更には四条天皇・後深草天皇・亀山天皇・

5代将軍藤原頼嗣の曾祖父となった稀有な人物です。


公経の姉は定家の後妻ということで、公経は定家の義弟になります。


公経はまた、後鳥羽院と順徳院親子が倒幕を企てた承久の乱を失敗させた人物でもあります。

倒幕が叶わなかったのは、計画を知った公経が幕府に情報を流したことが原因です。

この功績を認められ、公経は太政大臣まで出世し、

京都の北山に壮麗な西園寺を建立します。


因みに、鎌倉幕府滅亡後、荒れ果ててしまった西園寺を譲り受けたのが足利義満。
北山殿と呼ばれる、御所並みに大規模な邸宅を造営します。
それが鹿苑寺金閣です。

 

 

公経の生きた時代は、

先ほどの承久の乱や源実朝の暗殺など政治の動乱期でした。

そして施政者が公家から武家へと変わる転換期でもあります。

 

公経がこの大きなうねりの中心にいた人物であることを踏まえて

改めてこの歌を振り返ると

散りゆく桜の中に自分の老いを見つめる公経の気持ちが如何ばかりであったか

思いを馳せずにはいられません。

 

 

 

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3/20_22 桃李不言下自成蹊

床 桃李不言下自成蹊

花 土佐水木 貝母

花入 舟徳利

香盒 瑠璃釉

 

 

茶通箱と釣釜のお稽古です。

それぞれ独特な所作が多いので澱みなく点前をするのは難しいですね。

 

 

書は、桃李不言下自成蹊。

成蹊大学の名称の元となった有名な句です。

 

「桃や李(すもも)は何も言わず、

自己宣伝などしないけれども、

その花の美しさ、果実のおいしさに惹かれて

人々がその下に集まるので、

いつかおのずから小道ができる」

 

忠誠実直で人格が立派で徳があれば、あえて宣伝したり飾ったりしなくとも、

世の人々はおのずからその人徳を慕い、期せずしてそのもと集まってくるものだ

 

という意味です。

 

毎年3月中旬から4月にかけて日本列島は桜の季節です。

関東にも桜の名所が沢山ありますが、これは桜を広め、花見を奨励した八代将軍吉宗の功績によるところが大きいでしょう。

 

江戸時代以前までは上流階級の楽しみであった花見を、庶民の娯楽として広めたのが吉宗です。

放火の絶えない江戸の世で、人々を楽しませる手段として桜を選んだということですが、

目的はそれだけではありません。


吉宗が桜の植樹、花見の奨励に特に力を注いだ隅田川沿いの桜や、飛鳥山は、

崩れやすい地盤を花見客に踏み固めさせるという狙いがあったそうです。

それにより、土地の整備に活用したとのこと。

 

吉宗は

「川沿いを固めよ!」

などと命令を出すのではなく、

言葉を発しない桜を植えた。

 

その結果美しい桜の下に自然と人が集まり、強固な土地が出来ていった。

 

正に桃李不言下自成蹊の力を利用した訳です。

 

庶民にとってもただ楽しめば良いのですから、

お見事と言うより他にありません。

 

 

桜前線なる言葉を作るほど毎年桜の開花を心待ちにし、

花の下で飲食したい衝動に駆られるのは

元禄時代からのDNAなのですね。

 

今も変わらず花見を楽しむ日本人の姿を

吉宗も嬉しく思っていることでしょう。

 

 

 

 

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手製和菓子帖(其の十九)―きらきら文旦―

文旦を頂いたので、

皮を煮て砂糖漬けにしました。

 

砂糖漬けは時間がかかります。

これを作るのにも4日を要しました。

 

煮ては一晩休ませ、煮ては一晩休ませの繰り返し。

こうすることで渋みが和らぎ、香りと甘味が引き出されます。

 

自然の素材にあまり手を加えないお菓子は

薄茶と相性がいいですね。

 

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3/13_15 flower of life

床 花

 

お蔭様で、山田宗愛は、

皆様から頂いたお花、

川合さんが書いて下さったお花と、

沢山の花々に囲まれて四十九日間を過ごすことが出来ました。

 

皆様には御礼として、私が愛読しております般若心経絵本をお受け取り頂きました。

 

『般若心経絵本』

 

添え文を下に載せておきます。

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3/6_8 一花開天下春

床 一花開天下春

寄付 東大寺お水取り

 

 

「一花開天下春」

一輪の花が開き、そのことによって天下に春がやって来た。

開悟した人の目には山川草木全てが成仏していて、現実そのものが浄土である。

 

正に、十牛図の9番目、返本還源をそのまま表したような禅語ですね。

 

 

また、お稽古では織田有楽を取り上げました。

 

織田有楽が茶道史における重要人物であることは

国宝である3つの茶室のうちの1つが有楽の如庵であることからも言わずもがなといったところです。

(如庵についてはこちらの記事をご覧下さい)

 

 

有楽は

織田信長の弟であり

秀吉には側室である淀殿の後見役として補佐を務め

徳川家康とは同い年、家康が信長の元に人質として連れられた幼少期から親交を深めてきた

3天下人ととても関わりの深かった人物です。

 

大坂夏の陣の直前まで豊臣家と徳川家の和睦に尽力し

それが叶わないと悟ると京都に隠棲し、茶道に生きました。

 

秀忠の茶道師範役となった際に江戸に屋敷を賜った場所が、今の有楽町です。

 

昨年は如庵の魅力について、

今回は有楽の生涯や人物像を戦国史の観点から掘り下げました。

次はいよいよ茶人としての側面を深く研究してみたいと思います。

 

 

 

 

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手製和菓子帖(其の十八)―栗餡どら焼き―

 

栗餡を大量に作りました。

これをそのまま食べられる和菓子を

ということでどら焼きにしました。

 

随分と分厚くボリューミーになってしまったので

お稽古では4つに切ってお出ししました。

素材の甘味を感じて頂けたら幸いです。

 

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2/27_3/1 古渓宗陳

床 琴瑟和 大道賛

平家琵琶「相応」 雛飾

 

雛祭りに因み、床には琴瑟和をかけました。

(言葉の解説については昨年の記事をご覧下さい)

 

雛祭りは上巳の節句とも呼ばれます。

巳は弁天様の使いであることから、縁のある琵琶を飾りました。

 

 

お勉強では、古渓宗陳を取り上げました。

 

常々考えていたことなのですが

利休の師は武野紹鴎、その師が村田珠光。

村田珠光は侘び茶の創始者と言われています。

 

利休は武野紹鴎を通じて珠光の侘び茶を学んでいったとされますが

連歌師でもあった武野紹鴎の茶より、利休の茶の方が更に侘びている、

禅の思想が濃くなっているように見受けられます。

 

ということは、

武野紹鴎の他に、禅の立場から利休の茶に多大な影響を与えた人物がいるのではないか

それが古渓宗陳であると。


古渓宗陳は信長の百日供養や葬儀を主催、導師を務めた人物です。

信長派の大名達から慕われており、秀吉政権下でも発言力を持っていました。

古渓はある日石田光成と対立し、博多へ流罪となるのですが

その配流先では神屋宗湛と島井宗室により丁重にもてなされていたといいます、。

秀吉は当然それを織り込み済みであったのですから

秀吉にとって古渓は重要な人物であったことが分かります。

 

利休が古渓を尊敬していたことは、様々なエピソードから窺い知ることができます。

 

まず、茶席に掛ける墨跡。

利休が掛物の中でも一番重視したものですが、

初期には圜悟克勤、それから宗峰妙超等の大徳寺の禅僧のものを掛けるようになりました。

その後、利休はこれまでの常識を破り、存命している人物の墨跡を掛けました。

それが古渓の筆です。

利休にとって古渓は、亡くなった禅師と同格と言っても過言ではない程

有り難い存在であったということになります。

 

 

また、先の流罪の折、

利休は古渓の送別茶会を聚楽屋敷で催しますが

用いた墨跡が驚くべきものでした。

虚堂智愚のそれは、秀吉が表装を直すように利休に預けたものだったのです。

 

人から補修の為預かったものを自分の茶会で用いてしまう。

どう考えても道理に背く行為です。

例えば他の茶人が同じことをしたら利休は痛烈に批判するでしょう。

 

それほどのタブーを敢えて行った。

 

それは書かれた内容が

今から出ていかんとする傑僧に早く帰ってきて下さいと呼びかける、

正にぴったりな内容であったことも勿論でしょうが、

一番の理由は秀吉への当て付けでしょう。

古渓を流罪にした秀吉へ自分が如何に腹を立てているか、秀吉に見せつけたかったように見えます。

そして配流後、利休は放免の為奔走することとなります。

 

他にもかの大徳寺山門に木造を造る際に関わったり、

そもそも利休の名を考案したとされる説もある等

古渓が利休の人生にどれ程強く、深い影響を与えたかは想像に難くありません。

 

 

ですから利休による侘び茶の大成には

古渓宗陳の存在が欠かせなかったと言っても過言ではないように思います。

 

 

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2/20_22 供茶

床 雪裡の梅花只一枝

 

 

 

社中の方々や、

生前山田宗愛と親しくして下さった皆様から

お花や果物等が続々と届き、

和室がとても華やかになりました。

 

この週のお稽古は、皆様にお茶を供えて頂き、般若心経を読み上げ、

思い出を語り合いました。

 

 

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2/13_15 涅槃会

 

床 梅が香にたぐへて聞けば

  うぐいすの声なつかしき春の山里

  西行

花 加茂本阿弥椿 七竈新芽

花入 尺八「閑座」

   一重切「寿老」

香盒 黄瀬戸 宝珠

寄付 えぞ錦

 

 

 

 

 

 

二週連続の大雪で、土曜のお稽古はお休みとなりました。

 

その日の早朝、乙亥会発足前より講師として皆様と関わって参りました山田宗愛が他界致しました。

94歳でした。

亡くなる1週間と少し前まで、お稽古の日に社中の皆様に点てて頂くお茶をとても美味しそうに飲んでおりました。

その後、次第に食べ物が喉を通らなくなり、最後は苦しむことなく非常に安らかに

お釈迦様の入滅と同じ日に旅立つことが出来ました。

 

亡くなる前夜には、先にあちらの世界に逝かれた乙亥会の方が私の夢枕に来て下さいました。

きっと今頃は山田先生が慣れない場所に行くのをサポートして下さっていることと思います。

この様に大往生できたのも、皆様のご協力の賜物です。

 

写真は昨年9月に本人が書いた辞世の句です。

 

 

あたたかな

青海風をいただきて

うれしやな

 

 

 

本当に有り難うございました。

 

 

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2/6_8 光陰如矢

 

床 光陰如矢

花 えぞにしき

花入 鶴首 高取焼

香盒 滑車 織部

茶杓 銘「うるはしき神々の恋建国日」

 

 

今回の作品。

「光陰矢のごとし」は馴染みのある言葉です。

月日は飛ぶように去ってしまうと考えると、

少し慌てり嘆いたりしたくもなるかもしれませんが・・・

 

 

太陽は急ぐ様子もなく、なにくわぬ顔で輝いています。

同じように月は音もたてずあわてず、

美しい満ち欠けを見せてくれています。

こんな天体のリズムに波乗りのように

乗ってしまいましょう。

自分の小さな考えの中で自転して、

からまわりした時間を過ごしてしまわないように。

 

作品を書かれた井澤さんの紹介文より抜粋

 

 

 

 

以前から

 

1月は行く

2月は逃げる

3月は去る

 

と、この3か月はあっという間に過ぎてしまうと言われてきましたし

12月は言うまでもなく師走です。

年や、年度の終わりが見えると人は時間に追われるように感じる習性があるようですね。

 

自分で設定した締切のせいで、せわしなくなっていませんか?

空を見上げて、天体のリズムを感じてみましょう。

 

 

 

 

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1/30_2/1 瑞雪満地

床 瑞雪満地
花 紅梅 侘助

花入 竹香炉型

香盒 白磁 安南

脇床 初午

水壷 染付 末広

茶杓 「山国の闇おそろしき“鬼ハ外”」

棗 梅月

茶盌 馬上杯 宝珠紋

菓子 干し柿求肥

 

初午に因み、お稽古では馬上杯を扱いました。

 

木曜は、宇井さんのお孫さんが来て下さり、

空手の型を披露して頂きました。

体中に気が満ちていく様、キレのある動き、

本当に素晴らしかったですね。

 

土曜は、床の作品についてバランスの質問がありました。

書道の坂部先生もよく言われている通り

一つの作品の中に

字の大小、長短、筆の濃淡、線の太細等変化があることが望ましいとされます。

今回の作品はそれが極端で少々バランスを欠いていますが

ご自身が作品を書かれる際に変化については少し頭の隅に置いておかれるといいかもしれません。

 

 

 

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1/23_25 水月

床 水月空華
花 太神楽椿

花入 鶴首

香盒 紫式部

寄付 水月観音 竹うそ切花入 牛蓋置

脇床 井戸「水月」

 

 

 

大乗仏教では般若経の「空」を

「諸法は幻の如く、焔(陽炎)の如く、水中の月の如く、

虚空の如く、響の如く、ガンダルヴァの城の如く、

夢の如く、影の如く、鏡中の像の如く、化(変化)の如し」

と十喩を列挙して説明しています。

つまり水月とは実体の無いもののたとえです。
 
また、空華というのも、眼をこすったりすると眼中に浮かぶ
泡のようなもの事で、
やはり実体無きものを表しています。
 
また水月に関して、禅門では、
一つの月が処々あらゆる水に映る事から、
あらゆる存在の絶対平等性をも示しているといいます。
 
一見異なることを説いているようですが、
あらゆる存在は絶対平等であることと、あらゆる存在は空にして無自性であることは同一です。ですから結局は同じ事ですね。

 

「水月の道場に坐し 空気の万行を修す」

とは

「色即是空 空即是色」

と言い換えられるかもしれません。

 

 

ところで、最近インターネットで

ある観音像の写真が

「クールすぎる」

と話題になっていました。

私もそれを見てあまりの美しさに目を奪われたのですが

その画像がこちらです。

 

 

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1/16_18 寒中点前

先週に引き続き、三席を使って問答の練習に励みました。
寒中点前の時期ですので、筒茶盌の扱いを確認しました。

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1/9_11 初釜

床 竹青松瑞色新
脇床 水仙 水仙篭

釜 雪笹釡 木村一無

炉縁 七宝繋

棚 長板

皆具 萌黄金襴 利昇

茶入 鶴首 定一

仕覆 利休梅

茶杓 紅富士

茶盌 高砂重

棗 七福茶器写 一峰

茶 小倉山 小山園

菓子 花びら餅 青柳 丸梅盆

干菓子 小鳩豆楽 豊島屋 乙亥盆

 

 

平成26年最初のお稽古。

 

有り難いことに、乙亥会は木曜も土曜も沢山の方に参加して頂けるようになりました。

今年のテーマでもある「問答」を強化すべく

席を三つ設けてそれぞれ練習して頂きました。

 

また、今年の御勅題「静」に因み

「和敬清寂」の意味を再確認し、

各々咀嚼して頂きました。

 

本年も宜しくお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

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1/7 親子でお抹茶を楽しむ会「初釜」

横浜のUmiのいえにて、第2回のお抹茶を楽しむ会を開催致しました。

(前回の様子はこちら

前回同様、沢山のお客様にご参加頂きました。

 

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