葉蓋のお稽古です。
赤芽柏の葉を使用しています。
広間はクリスタルの花瓶を、小間はお土産で頂いた壺漬の竹容器に装飾したものを水壷に見立てています。
棗は広間が屋久杉のくり抜き、小間が瓢型です。
朱鷺の舞う天空をテーマにした和菓子制作です。
和菓子は、その後のお茶が美味しく頂けるための前座です。
今回がいつもと違うのは、お菓子の後がお茶ではなく白湯であるということ。
後が濃茶であれば主菓子(生菓子)、薄茶であれば干菓子ですから、白湯であれば本来干菓子以下のお菓子が求められます。
主菓子と干菓子の違いは水分含有量の違いですが、
言ってしまえば箸を使うか手でとるか、ということになると思います。
手でつまんで食べられ、その前の濃茶4服の後でももたれない、白湯が美味しく感じられる甘さ控えめのお菓子。
加えて主菓子が笹団子だったので、見た目の美しさもリクエストされました。
天空を独り占めして朱鷺の舞
朱鷺殖えて飛翔の群れを眩しめり 小林宗離
天領の森豊かなり朱鷺孵る 海老原雅子
床 風とゆききし雲からエネルギーを取れ 宮沢賢治 此川子葉
花入 魚籠
風炉先 雲板
棚 四方棚 富悦
水壷 赤絵間取 山岡昇
棗 遠山浮御堂 柳橋 松 真塗
茶杓 針彫「平成廿三年春」
茶盌 萩三種
白湯用 無名異焼三種 五雲 とんぼ
蓋置 引切
菓子 ときの舞 宗千土産
同 笹団子 屋久杉皿
同 天空 宗敦作 南鐐皿
寄付 夢中夢 宗英書
トキ人形
茶カフキは鎌倉時代に流行した闘茶がルーツになります。
わび茶の形成とともに闘茶は衰退するのですが、舞伎者らによって歌舞伎茶(茶歌舞伎)として愛好され続けました。
また侘び茶側でも茶の違いを知るための鍛錬の一環として闘茶を見直す動きが現れ、17世紀に作成された『千家七事式』には「茶カフキ」として取り上げられて闘茶も茶道の一部として編入されることとなったのです。
そんな茶カフキ、乙亥会では5回目です。
なかなか今回も難しかったようで、全て当てられたのはお一人だけでした。
当てられなくても、お茶をじっくりと味わって、今回は朱鷺に思いを馳せたり、お仲間と感想を楽しんだり…
とても和やかな会となりました。
床 福寿海無量
花 藪茗荷 白鷺草
花入 根来塗
香合 乾漆茄子 福弥作
根来塗の花入を使ったので根来の歴史について勉強しました。
色紙は本来左利きながら右で書道を習っていた社中が左手で頑張って書いたそうです。
土曜のお稽古。
小間は立礼卓です。
乙亥会創設時にちゃぶ台を木目に沿って切り、この形にしました。
この日も冷茶を楽しみました。
個人的には寝ている娘をおんぶしながら初めてお点前に挑戦しました。
立礼であればできるのではないかと思ったのですが、
前傾になったり戻ったりする度にもぞもぞと動く娘に気を取られて
中々手元に神経を集中させることができませんでした。
その上冷房の遠い小間で密着しているのは
娘には暑かったようで汗もかいてうなり出す始末。
お客様に後ろから扇いで頂き再び寝ました。
乳幼児がいながらのお茶というのは難しいものですね。
社中の皆様にはいつもご迷惑をおかけしております。
軸 秋草道人 会津八一(小間常設)
花 女郎花・ルドベキア
花入 竹籠
結界 木化石
風炉 唐銅
釡 南鐐打出
水壺 四方 河村又次郎
茶入 水滴 鐡五郎
茶盌 朝顔絵 陶山
茶杓 胡麻竹
床 追涼風
和光画 大亀賛
画は、千代女の「朝顔に釣瓶とられて貰ひ水」を描いたものです。
立花大亀は、大阪堺の生まれ、何宗寺にて得度されています。
大徳寺最高顧問になられ、平成17年に107歳で遷化されました。
乙亥会では年3回花の式という茶事を行っています。
今回も客全員がくじを引き、書かれた役割を務めました。
何の担当になるかはその時になるまで分からないのですが、皆様何の問題もなく果たされました。
日頃の精進の賜物かと思います。
暑い日が続きますが、亭主の設えで涼しげな気分になることができました。
6月なので水無月を作らなければ落ち着かないということで
30日の夏越の祓には少し早いですながらも見よう見まねで作ってみました。
ところが、出来上がりを見て母が一言。
「私の知ってる水無月はこんなではない。小豆が多すぎて嫌。」
私の中では一般的な水無月=小豆が敷き詰められている印象だったのでこれには驚きました。
その後色々と調べたのですが、どうもこの作り方で小豆の数を減らしただけでは見た目が美しくない、
というか、私の偏見ですが小豆たっぷりのイメージが定着しているのでただ小豆が足りないだけのように感じるのです。
何か工夫をと思いました。
基本に立ち返ると、6月は氷月であって
この和菓子についても、三角が氷で暑気払いを、小豆で悪魔祓いを意味している訳です。
確かに最初に作った水無月は氷の涼しさが感じられません。
そこで、上と下を2層に分け、上をゼラチンと葛粉で作り透明感を出してみました。
(葛粉は食感を柔らかくする為)
6月19日、横浜そごうにて、表千家堀内宗心先生の講和を聴いてきました。
そこでお稽古では、堀内家の歴史について、宗心宗匠のお言葉について学びました。
講和の内容で特に印象的であったのが
“「和敬清寂」の「和」とは「宇宙」である。宇宙は本来「和」である“
とのお言葉でした。
茶道で「和」について考えるということはつまり宇宙について考えることであるということですね。
逆もまた然り。
宗心宗匠は以前濃茶を練る際に、茶筅を秒速2センチで動かせばダマができない、という旨のお話をされていました。
堀内宗匠のお言葉を意識して自分なりにゆったりとした点前を試みたのですが、
普段よりゆっくりと点前をするというのはなかなか難しいものでした。
それはフリーハンドで直線を描く際、素早く筆を動かすよりゆっくり動かしたり
ピアノでも速く弾くよりゆっくりと弾く方が難しいことと似ています。
動きと動きの間にノイズのようなものが入ってしまうのです。
このノイズをなくすことができれば無駄のない美しい点前ができるのではないか、
それにはまだまだ相当な鍛錬が必要でしょうが、私としては目標が見えた気がしました。
静謐な点前と、お茶の粉とお湯の間に存在する流体力学を含めた“自然のことわり”は常に表裏一体であることが実感できた一時でした。
小間
水壺 備前ひさご形 蓋水紋
棗 箱根寄木細工 銘梵鐘
茶盌 丹波焼 陶谷 句銘「黒豆の育つ丹波や夏の霧 久良木先生」
次 信楽焼
茶杓 (短冊に因み)
蓋置 銘氷壺
建水 餌ふご つばくろ図
丹波焼の茶碗はその色からも黒豆を連想させるものであったため、久良木先生の句を銘としました。
蓋置は化粧クリームが入っていたものをネイルアート用銀粉で装飾したものです。
一片氷心在玉壺から銘をつけました。
建水のツバメはいつもこの時期に登場します。
梅雨の時期は注意深く見るとヒナを見つけることができます。
めいっぱい黄色い口を開いて餌を待つヒナの姿は本当に愛らしいものですね。
ちなみにこの時期といえば蝸牛。
母が娘に見せようと紫陽花の葉についていたのを見つけて目の前に持ってきたところ
娘が握りつぶそうとしたので慌てて避難させました。
床の間について。
お軸に因み、お花は山ごぼうと甘茶を有馬籠に入れました。
香合は傘です。
引き続き問答のお稽古をしましたが、スムーズにできた様子でした。
(床の間の写真はギャラリーをご覧下さい)
6月になり、短冊箱のお稽古に入りました。
道具(広間)
水壺 羽生田焼
棗 箱根寄木細工 銘 夕やけ
茶盌 銘清流 真清水蔵六 平成五年金閣寺大書院壁画完成記念
次 銹絵 芦の図 魁雲
茶杓 (短冊に因み各々)
蓋置 仁清写 芦に蛍図
建水 餌ふご 天目釉
菓子 あじさい餅 鶴屋吉信
梅雨 青柳
短冊は各々が書いてきたものです。
点前が自分の書いた短冊を掛け、正客と問答の連習をすることが狙いです。
皆様短冊には思い思いの作品を書いていらっしゃいました。
私個人は、ある有名な俳句が人生の中でこれ以上はまる機会はないであろうと思い、
また、自分でいくら頭をひねってもこれ以上の句はできないであろうと考え、
その句をそのまま書きました。
万緑の中や吾子の歯生え初むる
中村草田男
娘の小さな歯が3本見えてきました。
先週和菓子を作ったばかりだったので次は1か月後くらい…と思っていたのですが
お稽古前日の水曜日
「“朱鷺色”という銘でお菓子を作ってほしい」
と突然指令を受け、急遽制作しました。
本当は練りきりにする予定が、白あんが手に入らなかったため外郎に。
濃い朱鷺紅色の外郎を白い外郎で包み、透けて見える色が朱鷺羽の色になるように工夫しました。
ただ、外郎生地がとてもくっつきやすく、時間が経つと柔らかくなりすぎてしまうのが難点。
とても食べづらいお菓子となってしまい、社中の皆様にはご苦労をおかけしました。
改良が必要ですね。
この外郎を作り終えた夕方のニュースで
朱鷺のヒナが空に羽ばたいた映像が流れていました。
また、レッドリストも見直しだとか。
思わぬ吉報、そして偶然に舞い上がりながら
木曜のお稽古はお席も話題も朱鷺色一色になりました。
朱鷺色のさつきである「秀峰の光」の写真等はギャラリーをご覧下さい。
2週連続の茶箱ですが、今回は外に1席設えました。
時間帯によっては日も陰り、そよ風が吹き抜ける爽やかな席にもなりましたが、
点前も客も虫よけをぶら下げながらのお稽古となりました。
点前座に蟻の来客があり(洒落ではありません)、つぶさないように苦労した方もいらっしゃったとか。
そういったハプニングや苦労もまた、野点ならでは。
次は暑さの和らぐ秋になるか来年になるか未定ですが
室内でどれだけ趣向を凝らすよりもダイレクトに自然との触れ合いを体感することができる野点席。
今後も皆様と楽しんでいきたいと考えています。
道明寺粉という便利な材料のお蔭で初心者でも何とか形になりました。
中身は全く桜餅と一緒ですが、5月に桜という訳にもいかないので緑と黄色の色粉で色付けをしました。
完成すると、庭の紫陽花のつぼみにそっくりだったことから銘をつけました。
今後も月1くらいのペースで色々と挑戦していく予定です。
そのうちに上達するといいのですが…
社中の皆様には恐れ入りますがしばらく拙いお菓子にお付き合い願います。
5月の後半は茶箱です。
本来は庭で野点を楽しみたかったところですが
このところ夏日につき室内でのお稽古となりました。
点前の作法は乙亥会のオリジナルです。
故・久良木憲先生作の句
「鉄線や太き格子の家の町」
に因み、寄付、広間、小間まで花は鉄線のみを入れました。
金環日食を前に 平成二四年五月十七/十九
床 壱〇九糎の円相
花 琉球月見草 覆輪蔓桔梗 姫桧扇 小判草 野蒜
花入 三角口 青磁曽呂利
香合 螺鈿 出船図
棚 丸卓 飾 一糎の地球と月
水壷 志野 宏
茶碗 土耳古国旗 森岡嘉祥
地球 アマゾナイト
月 真珠
太陽 画用紙にアクリル絵の具
1cmの地球と月と太陽の設えは二度目です。前回は平成八年十月でした。
宮沢賢治を勉強していた時で、
「生徒諸君に寄せる」を読みました。
(下に抜粋して載せます)
地球を1cmとした時、月は0.25cm、太陽は109cmです。
地球から月までを1とした時、太陽までは394になります。
茶席ではこの縮尺をほぼ忠実に再現しました。
(地球、月の写真はギャラリーをご覧下さい)
乙亥会のお稽古では趣向が個性的になることがありますが
その中でも1位2位を争う変わった席かもしれません。
地球と太陽の大きさ、距離、そして宇宙の広がり。
そういったものに想いを馳せると自分を忘れることができます。
この奇妙な席の設えが禅における“無性”や“宇宙我”を感じられるきっかけになればこれほどうれしいことはありません。
仏教や禅で説く“無性”とは、決して「何もない」という意味の“無”ではありません。実をいうと、無ほど「大きなもの」ではないのです。
どんな大きなものでも、形を持つものには限界がありますが、もともと形のないものには限界がありません。無ほど、ゼロほど、大きなものはないというわけですね。“自性”が“無性”ということは、“自分”というものは、宇宙一杯に広がるほど“無限に大きなもの”であるということです。
つまり白隠さんは、“直に自性を証すれば”そういう“宇宙我(大我)”に気づく筈だと言われているのです。 (茶道雑誌五月 P40)
生徒諸君に寄せる 宮沢賢治
(略)
新たな詩人よ
雲から光から嵐から
透明なエネルギーを得て
人と地球によるべき形を暗示せよ
新しい時代のコペルニクスよ
余りに重苦しい重力の法則から
この銀河系を解き放て
(略)
新しい時代のダーヴヰンよ
更に東洋風静観のキャレンヂャーに載って
銀河系空間の外にも至り
透明に深く正しい地史と
増訂された生物学をわれらに示せ
(略)
潮や風……
あらゆる自然の力を用ひ尽くして
諸君は新たな自然を形成するのに努めねばならぬ