2/29 第6回 親子でお抹茶を楽しむ会-桃の節句茶会-

床 琴瑟和 前大徳大道老師賛

花 桃

花入 白酒器

脇床 交趾桃香盒葉紫 三室戸焼

風炉先 遠山

鉄瓶 擂座

瓶掛 獅子鳳凰文

茶箱 黒箔蒔絵一式 菱田賢治造

  歌銘 濁りなき心の水にすむ月は波もくだけて光とぞなる

                         道元禅師

茶盌 懐恋 児玉みなみ造

替 雛祭

数茶盌 春の野 菜の花 蝶

振出 銘 シリウス 義山 中村真紀造

茶 小倉山 小山園

菓子 引千切 澤村美保作

   ひなあられ

 

 

 

第6回目となる、umiのいえでの親子茶会。

今回は、桃の節句茶会として開かせて頂きました。

大変有難いことに、多くのお客様がご参加下さいました。

 

雛祭りの茶会ということで

茶箱の点前で一服差し上げました。

茶箱とは、茶道具の入った箱で、

一つの箱の中からお菓子やお茶盌、茶筅など、殆ど全ての道具が出てきます。

その為、全体的に道具が小ぶりな作りになっています。

箱から、小さな道具を出して並べていくところが、

雛遊びに似ていると思い、この趣向にしました。

 

 

床は、「琴瑟和(きんしつわす)」

琴も瑟も、弦楽器です。

琴は日本でも良く知られていますが、瑟は日本で見かけることはほとんどありません。

弦の数が13本の琴に対して、瑟の弦は25本。昔は50本のものもあったそうです。

その為ことに比べてずっと幅の広い、大型の楽器です。

 

この2つの楽器を共に演奏すると

見事に調和して美しい旋律を奏でることから、

この「琴瑟和」は夫婦の仲がむつまじい様子のたとえとして使われています。

 

同じく琴を使ったことわざで良く知られているものとして

「琴線に触れる」があります。

心の奥深くから感銘を受ける、心が震えるといった意味です。

 

心の奥が美しく揺れ動いた時は、琴の音がするのですね。

そう考えると、

「琴瑟和」は、ただ仲が良い、息がぴったりというだけでなく

心と心が共鳴し合っている仲、と言えます。

 

自分の娘が、将来、美しく心が共鳴し合える相手と巡り合えます様にと、

この言葉を雛祭りの日に飾っていたのですね。

 

 

床に合わせて、花は桃を、白酒の入っていた器を

花器に見立てて入れました。

 

そして、主茶盌には「懐恋」

つまり、懐かしい恋という名の桃色の茶盌を。

 

大人のお客様に、いつかの美しく心の震えた経験を思い出して頂ければ、と使いました。

 

その他、来る春に向けて華やいだ気分をと、

雛祭りや、春の草花、蝶々が描かれた茶盌で

皆様にお茶を召上って頂きました。

 

 

主菓子は、今回も食育講座の澤村先生。

雛祭りの頃の茶席菓子として京都を中心によく用いられる「引千切(ひちぎり)」をモチーフに

オリジナルで作って頂きました。

金時豆の黒い餡と、白いんげん豆と苺を混ぜたほんのりピンク色の餡。

2色が、お雛様とお内裏様として愛らしく座られていました。

てんさい糖とはちみつで微かに甘味が加えられ

素材一つひとつの美味しさが存分に引き出されたお菓子は、

小さなお客様が夢中で頬張られているのが印象的でした。

 

この大変手の込んだお菓子を、40個もお作り頂いたそうです。

澤村先生には感謝の気持ちで一杯です。

 

また、茶箱の点前では振出という小瓶の中に小さなお菓子を入れてお出しすることが定番となっています。

金平糖のようなお菓子が入っていることが多いのですが、

今回はひなあられを入れて皆様に召上って頂きました。

 

 

と、ここまで桃色で一杯の雛祭り茶会のようですが、

今回は裏のテーマを設けていました。

当日、2月29日は4年に一度しかないうるう日です。

 

地球が太陽の回りを一周するのには

約365.24219日かかるとされています。

ですから4年に1度うるう日を入れ、

さらに100で割り切れる年はうるう日を抜いて

100でも400でも割り切れる年はうるう日を入れて

それでも数千年に1日ずれる計算で…

 

何事も効率化されていく現代で日常生活を送っていると、身の回りの自然や仕組みを

人間が全て合理的に管理できているような感覚に陥りそうになります。

しかし閏日にまつわるこの複雑な仕組みは

宇宙の大きなリズムをどこまでも尊重し、人間が謙虚に直向きに添っていこうという姿勢が見えるようで

私は好きです。

 

古の人々も、月の満ち欠けを眺めながら、自分たちの生活を合わせてきました。

言うまでもなく、雛祭りも、その一つです。

 

今回使った茶箱は、鈍色に光る肌に大きく月が描かれています。

それに因み、ひなあられを入れる振出は、シリウスと銘をつけた青白い硝子のものを使用しました。

 

閏日の茶会を通して、宇宙に思いを向けて頂ければ・・・

 

 

 

茶席では、

一口お茶を飲む毎に「あぁ~」と満足そうに声を出すちっちゃなお内裏様や

前回は少し口をつけただけだったのに、今回は正座でごくごくと飲み切られたちっちゃなお雛様・・・

可愛くて微笑ましい姿を沢山見ることが出来ました。

 

その様子は、Umiのいえブログにてご覧頂けます。

2/29 親子でお抹茶を楽しみました

2/29 第6回親子でお抹茶を楽しむ会~桃の節句茶会~ その1

2/29 桃の節句 お茶会 その2 こどもたちと一緒に

 

来て下さったお客様

Umiのいえ代表、斎藤麻紀子さん、澤村美保先生、スタッフの皆様

お手伝いをして下さった社中の方々

本当に有難うございました。

 

次回は夏に納涼浴衣茶会を予定しております。

宜しくお願い致します。