2/18_20 地獄茶会

床 柔軟心

花 梅

 

2月15日は山田宗愛先生の命日でした。

18日のお稽古では森さんがおはぎを作ってきて下さり、皆で有難く頂戴しました。

 

床は、先日宗名を受けられた後藤さんの「柔軟心」

正に、ご本人そのものを表している言葉でした。

 

 

20日は、お稽古の後、小美濃さんが宗景と共に増上寺へ赴き、地獄茶会に参加されました。

劇場茶会という、大変珍しいイベントで、それはそれは大変刺激的なひと時を過ごされたようです。

 

小美濃さんの感想を掲載させて頂きます。

 

 

 

二〇十六年二月 地獄茶会レポート

 

へそ茶様主催の地獄茶会に

宗景先生とふたりで参加して参りました。
劇場茶会と紹介されているだけあって、

体験型のお茶会です。
さて、今回テーマが「地獄」であるという事以外の

情報がないまま増上寺へ。
この日は雨、先生は地獄にふさわしい天気だと仰ってました。

確かに晴天よりも雰囲気があるかもしれない?など話しながら到着。

 

受付を済ませた後、書道具のあるお部屋で十悪から

己の罪を選び書き、首から下げる。

準備ができたら、いざ皆さんと縄に引かれて地獄落ち。
道中真っ暗闇、所々にねじくれた蝋燭の明かりがあるだけ。
そして、案内人の方々の怖いこと怖いこと。

ダイナミックに動いているのに呼吸をしているかわからない、とかく妖しい気配がする。

私は最後尾にいたものですから真後ろにいる!と、ドキドキ緊張。

 

さて、地獄入り口の大襖をパーンと開くと異空間。

108帖の光摂殿大広間ですがやけに圧迫されて狭く感じるし、

天井の絵は暗さでよく見えず、右側に巨大な枯れ木、正面に白いヴェールのに包まれた閻魔女王様。
裁きは一人一人女王の前に出て注がれた釜の湯を飲む。

湯は屠蘇散のような香りと唐辛子の味。

机の上には舌を抜くやっとこがぽんと置いてあり、ああ怖い。
なによりも怖いのが、誰も喋らず、仕草と視線と表情で呼ばれること。
異様だけどもここではこれが当たり前だと受け入れる。

むこうからこちらにどんな感情が向けられているのかただ判るのが怖いが

閻魔女王の内側を見透かすような視線が一番怖い。

自分の罪をみられてしまうのはなんて地獄なのだろうか。
そんなことを思っているうちに裁きは進み、先生の番、

お湯を飲んだ後に舌を抜かれる演出がありました。心中、やっとこが使われてちょっと嬉しい、

しかも先生が一番にあたってちょっとおいしい!さすが女王様。

そんなこんなで全員の裁きが終わるといったん室外へ。

ここで抜かれた舌を返してもらい、もう一度大広間へ。

 

こんどは極楽へと景色が変わってます。
燦々とした照明、左側には巨大な松のアレンジメント、

ようやくみれた天井の美しい絵のもと僧侶の龍雄さんのお説法を聞きながらお菓子とお茶を頂戴します。

お菓子はカルバンゾー(ひよこ豆)と大豆、柚子の皮のせ南天寒天。

素朴な豆の味に柚子の酸味と添えられた南天の葉の緑がアクセントになってます。

さらに六角形の鏡が菓子器なっており、天井の花がそのまま景色となる素晴らしいものでした。

この趣向、光摂殿だけで得られるものなのだと感動しました。

しかも一人一人が見られる景色が違うというのは凄い。

 

お茶は亭主の藤本ゆかりさんにたてていただきます。

茶名は聞かずじまいでしたが、渋みが柔らかくさらっとした味わい、美味しかったです。

茶杓もトサミズキを削ってご自身で作られたもの。

とてもご立派なものでした。

(このアイディアは持ち帰らせていただき早速先生がお庭の木で作られました)

 

後になりましたが、私の心にのこる説法を紹介します。

一切唯心造。

人が見る世界は心(脳)が造っているものなのだ。
先ほど大広間の左側に枯れ木と松の木があったと書きましたが、

実はこの二つは同じもの。

説法中に言われて知り、全く別のモノだと思い込んでいたのでまさにその通り。
暗闇の気配も視線の怖さも、明るい部屋の安心感も私の心から生まれるのだ。

そのままに感じるのは私だけであるのだ。面白いです。

 

舞踏家、点滅さんの妖しい動作に、パフォーマーのうえだななこさんの仕草、

閻魔女王ことAyakoさんの存在感、人の良さそうな龍雄さんの説法、

亭主藤本ゆかりさんのお茶、数々の趣向とても楽しかったです。
途中これが茶会であるのを忘れていたくらいに。

さすが体験型劇場茶会。

 

外はまだ雨、靄がかかった東京タワーを観ながら帰りました。

こんな地獄なら堕ちてみるのも楽しい。怖いですけど。