床 三冬枯木花
花 山茶花
花入 手桶形
香盒 萩 三日月 一閑写 田原陶兵衛
小間 炉開
寄付 武蔵鐙書状臨書
今週は利休の文、武蔵鐙について勉強しました。
この文は利休と織部の歌のやりとりや呼び方から二人の仲の良さが窺えたり、
また伊勢物語を踏まえていることから教養の深さを垣間見ることが出来たり、
また竹の花入の記述等々、
興味深い点が多い為ことに珍重されてきたものですが
この文を、
利休が切腹する前年であることに重きを置いて改めて見ると
秀吉との確執がいよいよ極まり、死を覚悟した利休の心情が伝わってきます。
竹の花入の最高傑作、これ以上はないものが出来上がったと、
これは自身の侘び茶の大成であると言われていますが
わび茶のみならず自らの集大成と、
今までを振り返り感慨に耽っているような表現です。
また、小田原攻めが長くかからないだろうから終わるまで駆けつけなくてもいいと言いながら、すぐに陣中で茶を差し上げたいという文言。
蠅が多くて嫌だと、たわいもない愚痴をこぼしておきながら、
最後に蠅を打つ音も慰みであると、わざわざ冒頭に書き加えていること。
親しい人もなく、小田原の山の家に移った利休は
このところの秀吉との間柄からも既に切腹を考えていたでしょう。
孤独で、死を身近に感じると、実に様々なことが頭を巡ります。
もうすぐ結末を迎えるであろう自分の人生はどうであったか、
親しかった人たちは何をしているだろうか
そして1か月前に斬首されたばかりの愛弟子、山上宗二のこと…
ふと弱気になりそうな自分を
最高の花入が出来たと、自己肯定してみたり、
織部と今度会った時はどうもてなそうかと考えることで気を紛らわせたり
それも終われば蠅にまで意識をやることで現実逃避を図る…
(因みに漫画へうげものではこの蠅を金蠅=秀吉と位置づけており、そう見ても面白いです)
そして何より心の慰みとして、こういった会話を、織部と直接交わしたい、
いつでも訪ねてほしいという切実なる願いがひしひしと伝わってきます。
このように利休の心の動きを想像すると、
勝手ながら、
きっと末期がんの患者はこれと似たような心境であろうとさえ思えるのです。
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